きもち の きろく

彼らの眩しい煌めきを記録しておきたい

ヴィンセント・イン・ブリクストンで触れたリアル

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2022年10月30日のお昼、『ヴィンセント・イン・ブリクストン』を観劇した。いわゆるジャニーズの外部舞台を観劇するのはコロナ禍直前に観た森田剛の舞台『FORTUNE』ぶりだった。ゴッホや時代背景を調べていくうちにゴッホという人物に興味が湧き、更にワクワクがとまらなかった。今回正門担のお友だちの連番提案によりお邪魔させていただくことになったただの佐野担がブログにするなんてどないなん?と思ったが、感じたたくさん過ぎる程の刺激と感覚をなるべく新鮮なままで取っておきたかったため、短いブログにすることにした。

 

【もくじ】

1. 舞台作品という人の手で作られるリアル

 

2. ゴッホというリアルな人間の特性と欠点と良さ

 

3. 正門くんが演じるゴッホのリアル

 

1. 舞台作品という人の手で作られるリアル

カメラワークによって自動的にフォーカスされていく映像作品とはまた違って、照明の動きによって自らの視線でフォーカスしていく生の舞台ならでは面白さをまた思い出した。その空間すべてを自分で選択してフォーカスできることも贅沢。舞台の生の観劇はなんて贅沢なエンターテイメントなんだろうと思った。

また、今回の舞台はセットは変わらないものの自然光を表現する光の演出や変化が素晴らしくて心地よかった。自然光どころか窓すら存在しないはずの劇場。でもセットの扉と窓の外には確かにその空間があるようで。たったその光と影でこんな美しい空間が出来上がるのかと感激した。

本物を使って撮影し、画面越しに見る映像作品のリアル。リアルを追求しながら人工的に人の手で作られているが、直接的に生で観劇する舞台作品のリアル。リアルに魅せるために考えて人の手で作り込むからこそ仕上がるリアルというものもこんなに美しのだと知った。

 

2. ゴッホというリアルな人間の特性と欠点と良さ

事前に情報を入れた上で観劇したかったのでネットでゴッホの生涯と当時の時代背景などを簡単に調べていった。物事を文字通りに捉え、時には空気が読めず、感情のコントロールは苦手で良くも悪くも素直すぎる。極端で大胆だけどとても繊細で、人の顔色を苦手なりに伺い、恐らく幼少期から愛情に飢えて生きた人というのが調べた際に個人的に解釈したゴッホの人物像。

数時間前まで私の中のゴッホというものはネット調べられる程度の情報だけでただ知った "歴史上本当にいたらしい人物" だったのが、正門くんが演じるゴッホを見ることで私の中のゴッホが "リアルに生きていた人間" になった。

ゴッホは人として欠点として見られてしまうような苦手な物事も多いけれど、少なくとも正門くんが演じたゴッホはその欠点となる自分の特性にも多少自分で気づいているようで。でも特性は自分の努力や頑張りでは直せるものではない。それが特性だから。正門くんが演じるゴッホはそれと付き合い、時には苦しみながらも生きる姿がとても人間らしかった。壮絶な人生の中、それでもなんとか人々の中で37年間生きてきたのは、あの嘘のない素直さとそこからくる愛嬌だったのだろう思えた。

 

3. 正門くんが演じるゴッホのリアル

当たり前だが、私はゴッホに出会ったことはない。もちろんその時代に行ったことはないし、その土地に行ったことすらない。私はゴッホの本当のことは何も知らない。ただ、正門くんが演じるゴッホはリアルだと感じた。では、いったい何をもって "リアル" というのか。それは正門くんが情報から紐解いて落とし込み、表現する人間の深みだと思う。

あまりにも簡単すぎる言葉で大変失礼な表現ではあるが、ゴッホの生涯を表面上だけで知るとただの "狂った男" だった。けれど正門くんが演じるゴッホはただの狂った男ではなかったように思う。たくさんの兄弟の長男として生まれたゴッホも、画商として働くゴッホも、絵を描くゴッホも、画家となるゴッホも、様々な事件を起こしていくゴッホも、壮絶な人生により自ら生命を絶ったゴッホも、私たちと同じく生きていた人間だった。特性や家庭環境、生きる上であらゆる影響を受けて様々な思考をもち、人となる。生まれながらの狂った男なんておらず、たくさんの要因から出来上がった人間のある形の結果にしか過ぎない。正門くんの演じるゴッホはそれを感じさせるものだった。私はその正門くんが演じたゴッホの "人間らしさ" を "リアル" だと感じたのだろう。

正門くんがどのようにゴッホを解釈したのかは分からない。しかし、歴史上の人物を歴史上の情報として知り、それを解釈して演じることができる洞察力と表現力は天才だと思った。

正門くんは日頃たくさんの人々と出会う中でいったい何を感じ、何を考え、何を吸収しているのだろう。正門くんの瞳が見る世界を見てみたいと思った。